平岡 優一
アストロサイト脳領域間多様性のメカニズムをカルシウム応答から理解する
研究内容
我々の中枢神経は、構成される領域の多様性を持つことでその多彩な機能を発揮している。領域ごとの多様性は更にそれを構成する細胞の多様性によって成り立ち、特にグリア細胞における多様性に近年注目が高まっている。近年の解析からグリア細胞が遺伝子発現のレベルで複雑な多様性をもった集団であることが明らかになり、神経細胞同様に多彩な機能的多様性を発揮していることが期待されている。アストロサイトはグリア細胞の中でも最も多数を占める細胞で、数多くの脳機能の制御において重要な役割を果たしていると考えられている。アストロサイトの活動は主に細胞内カルシウム濃度の上昇によって化学的に行われていると考えられており、アストロサイトが自身のカルシウム興奮に対してどのような遺伝子発現や機能的な応答を示すのかが脳領域にまたがったアストロサイトの機能的多様性の根幹であることが示唆されている。しかしながら具体的にどのような差異が脳領域ごとに存在し、いかにして脳機能へ寄与しているかについては依然として不明である。そこで本計画ではアストロサイトのカルシウム興奮に起因する遺伝子発現変化に着目して、脳領域特異的アストロサイト機能とカルシウム興奮の関連を明らかにすることでアストロサイト多様性の生理学/病理学的意義を解明することを目指す。
研究概略図
代表業績
1.Hiraoka Y., Sugiyama K., Nagaoka D., Tsutsui-Kimura I., Tanaka K.F., Tanaka K. Mice with reduced glutamate transporter GLT1 expression exhibit behaviors related to attention-deficit/hyperactivity disorder.Biochem Biophys Res Commun. 2021 Aug 27;567:161-165.
2. Nakano Y., Susa K., Yanagi T., Hiraoka Y., Suzuki T., Mori T., Ando F., Mandai S., Fujiki T., Rai T., Uchida S., Sohara E., Generation of NPHP1 knockout human pluripotent stem cells by a practical biallelic gene deletion strategy using CRISPR/Cas9 and ssODN. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 2022 Feb;58(2):85-95.
3. Irie M., Itoh J., Matsuzawa A., Ikawa M., Kiyonari H., Kihara M, Suzuki T., Hiraoka Y., Ishino F., Kaneko-Ishino T. Retrovirus-derived RTL5 and RTL6 genes are novel constituents of the innate immune system in the eutherian brain. Development. 2022 Sep 15;149(18):dev200976. Epub 2022 Sep 27.
4. Onodera, M., Mayer, J., Furukawa, K., Hiraoka, Y., Aida, T., Tanaka, K., Tanaka, K.F., Rose, C.R., Matsui, K. Exacerbation of epilepsy by astrocyte alkalization and gap junction uncoupling. J Neurosci. 2021 Mar 10;41(10):2106-2118.
5. Zhao, Z., Hiraoka, Y., Ogawa, H., Tanaka, K. Region-specific deletions of the glutamate transporter GLT1 differentially affect injury-induced neuropathic pain in mice. Glia 66. 1988-1998, 2018