小西 博之

名古屋大学大学院医学系研究科 機能組織学・准教授
konishi@med.nagoya-u.ac.jp
A02
グリアとリンパ管のインターラクションによる脳病態制御

研究内容

リンパ管は脳内に存在しないことが古くから知られているが、脳を包む硬膜には存在することが近年発見された(Louceau et al., Nature, 2015)。その発見以来、硬膜内リンパ管は、脳脊髄液の吸引管としてだけでなく脳と免疫系の情報交換の場として着目されている。健常時、硬膜と脳は、くも膜・くも膜下腔・軟膜により隔てられており、硬膜内リンパ管はグリア細胞と直接接することがないため、「グリアとリンパ管のインターラクション」という概念は想定されてこなかった。申請者は、脳損傷モデルマウスを用いた研究から、脳損傷後にリンパ管がリモデリングされるという新たな現象を見出している。リモデリングされたリンパ管はミクログリアやアストロサイトと接するため、健常時には起こらない「グリアとリンパ管のインターラクション」が脳損傷時には起こっている可能性が予想される。本研究では、「グリアとリンパ管のインターラクション」として、グリアがリンパ管リモデリングを制御する可能性や、リンパ管がグリア機能を制御する可能性を検証する。さらに、そのようなインターラクションが脳損傷予後に与える影響を調べる。本研究を進めることにより、脳損傷後におけるグリアの新たな機能が見出されると考えられる。また、本研究が、画期的な脳損傷治療法に発展する可能性も期待される。

研究概略図

代表業績

1. Konishi H*, Koizumi S*, Kiyama H*. Phagocytic astrocytes: Emerging from the shadows of microglia. Glia, 70(6), 1009-26, 2022.

2. Li C, Konishi H*, Nishiwaki K, Sato K, Miyata T, Kiyama H*. A mouse model of microglia-specific ablation in the embryonic central nervous system. Neurosci Res, 173:54-61, 2021.

3. Sato T, Konishi H*, Tamada H, Nishiwaki K, Kiyama H*. Morphology, localization, and postnatal development of dural macrophages. Cell Tissue Res, 384(1), 49-58, 2021.

4. Konishi H*, Okamoto T, Hara Y, Komine O, Tamada H, Maeda M, Osako F, Kobayashi M, Nishiyama A, Kataoka Y, Takai T, Udagawa N, Jung S, Ozato K, Tamura T, Tsuda M, Yamanaka K, Ogi T, Sato K, Kiyama H*. Astrocytic phagocytosis is a compensatory mechanism for microglial dysfunction. EMBO J, 39(22), e104464, 2020.

5. Konishi H*, Kobayashi M, Kunisawa T, Imai K, Sayo A, Malissen B, Crocker PR, Sato K, Kiyama H*. Siglec-H is a microglia-specific marker that discriminates microglia from CNS-associated macrophages and CNS-infiltrating monocytes. Glia, 65(12), 1927-43, 2017.