藤田 幸

島根大学 学術研究院医学・看護学系・教授
yuki.fujita@med.shimane-u.ac.jp
A03
ミクログリアの機能操作による脳-身体連関機構の解析

研究内容

ミクログリアは、加齢や疾患など様々な原因で傷ついた神経軸索の周りに集積し、炎症や貪食による二次的な神経障害を引き起こす。またミクログリアは、生理的な脳機能にも重要な役割を持つことが注目され始めている。例えば、脳発達期にはミクログリアが栄養因子を分泌し、神経細胞の生存や軸索維持に働くことがわかってきた。生後まもなく、神経軸索の集まる白質部分に栄養因子を分泌するようなミクログリアの集団が集積し、神経回路形成をサポートすること、そしてその分子機序が明らかになった。一方で、このような神経保護的な作用を有するミクログリアが脳内に集積するのは、盛んに神経回路が形成されている時期に限定的であり、早い段階で消失する。なぜ、成長とともにその神経保護作用が失われていくのか、その意義やメカニズムは未だ不明である。
近年の1細胞レベルの解析から、成長とともにミクログリアの性質が遺伝子レベルで変化していくことが報告されている。また、次世代シークエンサーの技術革新や普及により、ヒストン修飾など直鎖状のゲノムに対する修飾のみならず、ループ構造のように立体的なクロマチン構造が、包括的な遺伝子発現調節のために重要であることが広く認識されつつある。本研究では、成長過程を通じたクロマチンの三次元的な構造の変化が、ミクログリアの性質変化に与える影響と、それが脳全体の発生・発達を介在する機序について明らかにすることを目指す。

研究概略図

代表業績

1. Fujita, Y.* (*Co-corresponding author), et al. (2022) 3D spatial genome organization in the nervous system. Neuron. S0896-6273(22)00542-6.

2. Fujita, Y.* (*Co-corresponding author) , et al. (2020) Netrin-G1 regulates microglial accumulation along axons and supports the survival of layer V neurons in the postnatal mouse brain. Cell Rep. 31(4):107580.

3. Fujita, Y.* (*Co-corresponding author) , and Yamashita, T.* (2020) Protocol for Co-culture of Microglia with Axons. STAR Protocols, 1(3):100111.

4. Fujita, Y ., et al. (2017) Decreased cohesin in the brain leads to defective synapse development and anxiety-related behavior. J Exp Med. 214(5):1431-1452.

5. Ueno, M.#, Fujita, Y.# (#Equal contribution) , et al. (2013) Layer V cortical neurons require microglial support for survival during postnatal development. Nat Neurosci. 16(5): 543-551.