自閉症者はネグレクトなどの劣悪な小児期体験への脆弱性を呈しますが、裏打ちする機序は不明です。ネグレクトモデルである幼若期隔離マウスでは脳と末梢血に共通してCD14+細胞が活性化されますが、血液脳関門で守られた脳実質のマイクログリアではなく、同関門の機能が弱い髄膜や脳血管周囲腔に存在するCD14+細胞が末梢血と共通の機序で活性化される可能性があります。末梢血成分のうち血漿エクソソームや血漿メタボライトは血液脳関門を通過しやすい性質をもつため有力な候補物質ですが、これまでに小児期体験が不良な自閉症者で高値となる血漿エクソソーム含有分子を確認しています。興味深いことに、この分子は自閉症関連分子として知られており、かつCD14+細胞活性化作用をもちます。我々は一部の自閉症者で特定のT細胞が増加することも確認しており、自閉症者が劣悪な小児期体験に脆弱性を呈す病理にはCD14+細胞の活性化とこの特定のT細胞との共局在が関与していると考えました。 研究期間内には、このエクソソーム含有分子が髄膜や脳血管周囲腔のCD14+細胞に与える影響および脳機能・行動に与える影響をマウスへのエクソソーム注入実験などにより明らかにします。また、共培養実験によりCD14+細胞活性化と特定のT細胞の共局在につき検討します。
Makinodan et al, Science, 2012
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Kitamura et al, Makinodan, J Psychiatric Res, in press