柴崎 貢志

長崎県立大学大学院 人間健康科学研究科 細胞生化学講座・教授
kshibasaki@sun.ac.jp
A01
グリア・神経ネットワークの統合による脳機能発現

研究内容

本研究では、「脳内温度の恒常的な維持と温度不均一性の実現、そして、これら温度動態から派生する神経興奮調節のカギを実はグリアが担っている」という大胆な仮説をたて、その検証と証明を行い、その知見を応用した脳病態の分子基盤解明研究も行う。我々は、1細胞レベルでの温度分布を可視化する新規イメージング手法を確立した(Nature Commun 2012)。そして、これを用いて培養神経細胞と培養アストロサイトの細胞ごとの温度状態を比較した。神経細胞では、全ての細胞が37℃近傍であった。一方、アストロサイトでは、37℃の外部温度と同等の細胞以外に、発熱や冷たい状態にある細胞が多数存在することを発見した。着目すべきは、環境温度(=体温)よりも冷たいアストロサイトが存在する点である。発熱を血流循環・放熱するだけで、脳冷却が本当に可能なのであろうか?今回見出された冷たいアストロサイトが脳内で特殊吸熱源となっており、これらの特殊生理作用の総アウトプットとして、脳が効果的に冷却され、一定の脳温が保たれる可能性が高い。 そこで本研究では、脳内に吸熱源となる特殊なアストロサイトが存在し、一定の脳温を保つことに貢献していることを明らかにする。また、それらのアストロサイトの温度状態が変化することで局所的にダイナミックな温度変動が生じ、この結果、局所温度変化が脳内温度センサーTRPV4を介して、神経活動調節に変換されることを明らかにする。

研究概略図

代表業績

#は応募者が責任著者であることを示す

#Shibasaki K, Yamada K, Miwa H, Yanagawa Y, Suzuki M, Tominaga M, Ishizaki Y. Temperature elevation in epileptogenic foci exacerbates epileptic discharge through TRPV4 activation. Laboratory Investigation 100: 274-284, 2020

Hosoi N, Shibasaki K, Hosono M, 他11名 Deletion of class II ARFs in mice causes tremor by inhibiting Nav1.6 trafficking to cerebellar Purkinje cell axon initial segments.
J Neurosci. 39(32):6339-6353, 2019

Matsumoto H, Sugio S, Krizaj D, Akiyama H, Ishizaki Y, Gailly P, #Shibasaki K.
Retinal detachment-induced Müller glial cell swelling activates TRPV4 ion channels and triggers photoreceptor death at body temperature.
J Neurosci. 38(41):8745-58, 2018

Hoshi Y, Okabe K, Shibasaki K, Funatsu T, Matsuki N, Ikegaya Y, Koyama R. Ischemic brain injury leads to brain edema via hyperthermia-imduced TRPV4 activation.
J Neurosci. 38(25):2888-17, 2018

Sugio S, Nagasawa M, Kojima I, Ishizaki Y, #Shibasaki K. TRPV2 activation requires interaction with the actin cytoskeleton and enhances growth cone motility.
FASEB J. 31: 1368-1381, 2017