アストロサイトは中枢神経系にひしめくグリア細胞の一種であり、神経細胞、シナプス、他のグリアや血管系細胞と 組織学的・機能的に連関する。アストロサイトの活動は、外部環境刺激に伴い変化することが知られていたものの、この活動変化と神経活動・行動表出の間にある因果関係は不明であった。本研究では、特定の行動によって活性化するアストロサイトBAE(behaviorally-activated astrocyte ensemble [béɪ; 英語スラングで“相棒”の意])だけを遺伝学的に捕捉し、操作する遺伝学ツールを開発する。行動モデルとして社会ストレス適応を用い、”ストレス脆弱 BAE” および“ストレス抵抗BAE”の分布・形態・Ca2+シグナル・遺伝子発現プロファイルを定量的に明らかにすることを目的とする。
脳にひしめくアストロサイトは同質な細胞群と長らく見なされてきたが、近年、異なる 脳領域のアストロサイトが多様な分子発現を示すことが報告されている(分子レベルの多様性)。本研究は、この概念の一歩先である「機能レベルの多様性」の解明を目指す。行動特異的な活動性アストロサイト亜集団を標識することにより、行動の回路基盤におけるグリア依存性メカニズムを明らかにする。
Nagai, J., …, Khakh, B.S. (2021) Specific and behaviorally consequential astrocyte Gq-GPCR signaling attenuation in vivo with iβARK. Neuron, 109(14):2256-2274.
1Nagai, J.,1Yu, X., …, Khakh, B.S. (2021) Behaviorally consequential astrocytic regulations of neural circuits. Neuron (Review), 109(4):576-596.
1Yu, X., 1Nagai, J., …, Khakh, B.S. (2020) Context-specific striatlal astrocyte molecular responses are phenotypically exploitable. Neuron, 108(6):1146-1162.
1Yu,X., 1Nagai, J., Khakh, B.S. (2020) Improved tools to study astrocytes. Nature Rev Neuro (Review) 21:121-138.
Nagai, J., ….., Khakh, B.S. (2019) Hyperactivity with disrupted attention induced by activation of an astrocyte synaptogenic cue. Cell, 177(5):1280-92.