安部 健太郎

東北大学・大学院生命科学研究科・教授
k.abe@tohoku.ac.jp
A02
グリアによる脳-身体連関の制御

研究内容

学習や炎症、病態に伴いグリアが脳の可塑的変化に寄与する分子メカニズムの多くは不明である.このような脳の可塑的な変化の背景には,細胞の状態を規定する遺伝子発現状態の長期的な変化がある.多数の遺伝子の発現を制御する転写因子は脳と細胞の状態を司る「かなめ」であり,脳機能の遂行や病態の進行過程には,転写因子の活性のダイナミックな変化および慢性的な活性変化があると考えられる.本研究では、研究代表者が近年確立した「脳内転写因子活性プロファイリング」により,学習や病態に伴う神経細胞およびグリア細胞内在の転写因子活性の変化を定量解析し,活性が変動する転写因子を明らかにした上で,それらを人為的に操作することによる脳機能への介入を目指す.
本研究期間では末梢の炎症が記憶形成へ及ぼす影響をモデルとし,病態に依存して活性が変動する脳内転写因子とその活性変化タイムコースを明らかにする.転写因子活性とトランスクリプトームの複合解析や,転写因子活性イメージング,うつ病モデルでの転写因子活性との比較から,病態が脳機能を障害する機構を明らかにし,転写因子活性を人為的に操作することにより脳機能への介入を目指す.

研究概略図

代表業績

#は応募者が責任著者であることを示す

Abe et al., “Transgenic songbirds with suppressed or enhanced activity of CREB transcription factor”. PNAS, 112(24),7599- 604 (2015).

Abe and Watanabe, “Songbirds possess the spontaneous ability to discriminate syntactic rules”. Nat.Neurosci, 14(8), 1067-73 (2011).

Abe and Takeichi, “NMDA receptor activation induces calpain-mediated beta-catenin cleavages for triggering gene expression.” Neuron, 53(3):387-97, (2007).

Abe and Takeichi, “EPLIN mediates linkage of the cadherin-catenin complex to F-actin and stabilizes the circumferential actin belt”. PNAS 105(1), 13-9, (2008)

Abe et al., “Stability of dendritic spines and synaptic contacts is controlled by αN-catenin”. Nat.Neurosci, 7(4), 357-63 (2004).